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【第2回「根源へ展」(2017年)総評】


 この展覧会への参加がこれからの長い創作人生の起点として位置づけられる――、

 出品者にとってはそのような意味合いが色濃くあったように思われます。

 起点として捉えるならば、ここで得たものをこれから先どのように展開していくか、

 ものづくり・表現者としての自己確立に至る道程をいかに歩んでいくかということこそが、

 肝要な事柄であり、また今後の楽しみとなるところかと思います。

 なのでここでの総評も、未来を遠望するような立ち位置から現在を捉えるというような心持ちで

 作品を見ることを試みてみたいと思います。

 会期中に行なわれた、かたち塾主催のトークセッションでのやりとりをも参照しました。




磯崎隼士(油画)

  
skin13                     skin15         
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この展覧会への参加が決まるまではいわゆる油彩画を描いていた。参加が決まるあたりから立体表現へと展開していく手がかりを模索しはじめ、支持体としてシリコンを使うことに至った。
シリコンに油絵を溶かして肌色に近い色を出し、薄い膜状に延ばして支持体とした。シリコンの表面をさらに油彩で彩色し、人毛を植え込んでいって“皮膚”の雰囲気を出している。そして文字やイラストを刺青のように描き込んでいる。タイトルは「skin」とつけている。
制作のモチベーションを記した作者のコメントの中に、「認識上のハグを起させる」「ドラッグ」「刺青」などの言葉が見られるように、アウトロー志向的な空気を漂わせている。作者にとってのアートの意味、そして現代社会の中でのアートの機能を問おうとする意図が看取される。
平面表現から立体への過渡期として見て、今後さらに立体化が進んでいくのか、平面性に留まることになるのか、微妙なところに入っているようである。会期中、作者は会場で、時間があればスケッチ帳にサインペンで絵を描き続けていた。「いくらでも絵が描ける」「絵の中で絵を描いているような感覚」という発言があった。
シリコンの制作を通して、かえって“絵画”への意識を強めていったとも解釈できるようなところに来ているようである。

片山洸希(ガラス造形)


空の浸透圧
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長さ2m、幅1m、厚さ1.5cmほどの板ガラスの中央を幅10cmの不透明な帯状の面が垂直に走っている。透明な支持体に不透明な模様を入れたものと捉えるとありふれた立体物のように見えるが、不透明部分はガラスの表面に細かな亀裂を入れて作っているのである。
亀裂を入れるのは手作業に依っている。うっかりすると支持体自体が真っ二つに割れる可能性がある。そのリスクを背負っての制作である。
制作のモチベーションとしては「物質の限界を超える」という命題に挑戦するということであった。「物質の限界を超える」ということをどう解釈するかということも含めて大変難しいテーマで、果敢な挑戦と言えるだろう。
ギャラリートークでは、もし割れてしまったらどうするか、というようなことも話題になった。逆にいえば、そこにもまた一つの道が開けてくる可能性もあると言えるだろう。
会期中、来場者に説明する際、「空気、大気の精神性を表現したい」といった旨のことを発言していた。これは、展覧会が開催されるまでは聞かなかった発言である。
これを初めて発言したのは、そのテーマ性を表に出すことで正面から向き合っていくことを明言するためであったようだ。
とにかくこの作品で「物質の限界を超える」という課題に取り組んでいくスタート地点に立ったことだけは確かである。



塩田法子(油画)

 
Gift from the Origami        Ginza 15:00
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日常で出会う様々な事物をカメラで撮影し、そこからディテールを切り取ってキャンバス上にコラージュしていくという方法で画面を構成している。比喩的に言えば、モノをコレクションして、それによって自分の精神が棲まう空間作りをしていると読むことができる。展覧会企画者としては、これを「絵画の加工」というふうに捉えてみた。
今、この時代に油彩画を描くことの意味、平面表現を推進していくことの意味を、現代絵画の展開史の中で捉え、「絵画という物質」というコンセプトの中でこの作者の創作の意義を考えようとしたわけだ。
この観点からしたときに、出品された作品の目だった特徴として、色彩の鮮やかさということが言えるだろう。油絵具という複製素材から鮮やかな(言い換えれば彩度の高い)色を作っていく技法を作者は会得しつつあるようである。
リーフレットの作成のために昨年の時点で仕上げられていた「Gift from Origami」に目覚しい飛躍があり、今展のメインを飾った「Ginza 15:00」で更なる進展が見られた。出品作品中6点がそれ以降の作品で、ステップアップしたレベルでの新たな試行錯誤もあるようだ。
単なる油彩画という枠を超えた、未知の可能性があれこれと感じさせる制作である。


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