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服部牧子[陶造形]

[人は日々]

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やきものの産地、岐阜県美濃地方を拠点に、独自の陶造形創作活動を展開しています。

 

染付金彩ポット

2005年

57×35×35cm

 

服部さんの特徴がよく出ている作品。20世紀初頭にムーブメントを起こした立体派の多視点的な造形方法を受け継いでいる。

 

不在のかたち

2008年

23×120×62cm

 

亡くなった母親の形見の洋服をモチーフにした作品。

 

 

Work C

2005年

88×40×30cm

 

多視点性が身体の内部へ、さらには家族が過ごした住み家やその周囲の環境への追憶にまで広げられている。

 

 

heart 2

2017年

23×21×23cm

 

心臓の形を表した作品。最近は多視点性を物の内部へと向けて行っているようである。。

 

 

共鳴

1989年

56×16×16cm

 

陶芸家として活動を始めたころ、サウンドオブジェと称して音の出るオブジェ(陶製の楽器)を制作していたころの作品。

本来は横長に寝かせてあったのを足を付けて立てて見るとまた別な情趣が感じられ、新しい創作のように見える。

 


 

[プロフィール]

静岡県沼津市生まれ東京育ち

国際基督教大学教養学部人文科学科中退

愛知県窯業高等職業訓練校卒業

岐阜県陶磁器試験場特別研修生修了

[受賞歴]

1987年  多治見市美術展市長賞受賞

1988年  多治見市美術展グランプリ受賞

2003年  中日韓国際陶磁博覧会招待出品/

2017年  JCAA受賞作家7人展招待出品(ギャラリーK・東京)

[所属グループ]

源流/NAU(New Artist Unit)美術協会/新陶彫協会/ゼロの会

 


 

[論評]冊子「人は日々」No.02より)

服部さんの造型感覚が彫刻的であることは、ものの見方が基本的に多視点的であるというところに見出されます。多視点的とは、ひとつのものを見るにも複数の視点から見る、角度を変えて視るということであり、そういう習性のようなものをこの人は持っている。画像①の作品は、服部さんのそういう特徴が典型的に、わかりやすく出ている作品である。

なんでも彼女は、小学生段階でセザンヌや立体派の画集を見るのが好きだったそうである。物事を多視点的に捉えていく感性はこの頃から養われていったかと推測され、ある意味では、そのような素養がその後のいささか波乱万丈な人生を送るそもそもの淵源となっていると考えられなくもない。さらにその多視点性は単に視点を移動させるということだけでなく、ものごとが置かれている社会状況や生活環境の変化の中で見る、などの時間的な変化といったことも含んでいる。

(中略)

服部さんの多視点性がものの内側にまで侵入していこうとする傾向は、近年特に強く見られるようになってきた。『Heart 2』は心臓の形を表したものである。さらに、脳の中の神経組織に想像力を働かせたような作品も作っている。

最後に、『共鳴』は服部さんの制作としてはちょっと珍しく見える。取材のときにアトリエに展示されていたおびただしい数の作品群の中にあった。多視点性は彼女の作品にいくらか饒舌な見かけを与えるが、この作品はシンプル且つ端的にアピールしてくる。かつて若年時に制作していたというサウンドオブジェの系列のものかと思われる。そしてそのシンプルな見かけに、初期の作品でありながら、造形作家としての服部さんの来し方が凝縮されているような印象があると同時に、今後の展開へのひとつの方向性を示しているように私には感じられた。