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高橋稔枝[ファイバーアート]

[人は日々]

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染織技法を使った造形表現です。英語表記ではファイバーアートもしくはファイバーワークと呼ばれています。
高橋さんの場合、初期は機で織った作品を作っていましたが、途中から「糸を織らない」で制作する方向——いわゆる造形表現の方向に進んでいきました。
モチーフとしては自然界から得てきたものが多いのですが、20世紀末あたりから社会的な事象にも関心を向けてきました。
2001年の9月にニューヨークで起こった同時多発テロ事件は、高橋さんの創作史においても区切りをなす出来事でした。
以後、植物の”種”を造形モチーフとし刻的な作品、あるいはインスタレーションによる表現が主体となっていきます。

 

 

 

 

 

 

 

第22回個展「森に還る」

綿糸・麻布・墨 2018年

ギャラリー・ギャラリー(京都市)

 

 

 

 

第21回個展「存在する」

綿糸・麻布・藍・柿渋 2017年

不二画廊(奈良市)

 

 

 

 

「flag」

釜山市(韓国)での二人展出品作

2008年 綿糸・麻布・新聞

支持体の中に)新聞記事を埋め込んでいます。

 

 

 

 

 

 

第14回個展「ラブ号の出発」

2005年 綿糸・麻布・新聞・植物染料

 

 

第9回個展「蘇生」

1999年 綿糸・麻布・新聞・植物染料・金網

不二画廊(大阪)

 


略歴

1947年東京都生れ

1983年  第30回全関西展読売テレビ賞受賞(大阪)

1990年  武蔵野美術短期大学専攻科修了工芸デザインテキスタイル専攻

2003年  Mini Textile Art International Exhibition, Best Work賞受賞(ヘルソン/ウクライナ)/2006年The 6th International Biennial on Contemporary Textile Art Exhibition, 銀賞受賞(ヘルソン/ウクライナ)

他、海外での公募展入選多数、個展多数。

 


[論評]冊子「人は日々」No.05より)

 …高橋さんもまた自分の創作において、「樹や森を創る」という思念を抱懐しているのだということに思い当たりました。

 

第4回個展のあたりから、技法的には“糸を織らないで使う”ということが主軸になっていきます。金網や、布をステッチしたものを支持体にして、そこに糸を染織用の糊で貼ったり糸で止めたりして、表面のマチエールを作っていく手法です。第4回展のときは絵画的な制作になっています。先史時代の人類が洞窟の壁面に描いた絵や、日本の古墳に描かれた絵などをイメージしたとのことです。“織らないで”表現するとどのようになるのか、と自問自答しながら試行錯誤を重ねていって、この洞窟壁画をモチーフにした制作を通過して技法が確立されていきました。

 

“種”が生まれてから現在まで、“種”は身を閉ざしたままです。世界はますます混迷を深めているかのように見えます。“種”のなかから何かが芽を吹き出すというようなことが、この先起こるのでしょうか? 今のところ、“種”は沈黙状態を維持して、種のままに成長していくようです。なかなか身を開いていかない姿に、現代という時代、その人間社会のあり方への作者高橋さんの感受性が表されているように、筆者には感じられます。