WEB版『かたち』 since1979

大蔵達雄[漆芸]

[人は日々]

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静岡県の伊豆半島の付け根あたり、函南町という町の山中に工房を構えています。
長野県の南木曽の木地師の家に生まれ、成人して漆器制作の道に進みました。
1980年代に漆器作家としてデビューしましたが、根来漆器にベースを置く、野趣味のある作風は、ポストモダンな時代の風潮にマッチして、たちまちのうちに人気を集めました。
素材の木地や漆の原料などすべて自前で調達・加工して、ものに即した制作を進めています。

 

 

 

金彩擎子

h37×w79×d5cm

※ 擎子(けいし)/〝擎〟の字は奉げる、掲げるという意味。擎子は美術品や鑑賞置物などを置く台として使われます。大蔵さんは面白味のある材を探して擎子を作っています。ひとつひとつの古材から連想されてくるものを、楽しみながら作品にしている様子が浮かんできます。まな板皿や折敷、インテリアとしては壁面装飾など、用途も多様です。

 

 

 

 

擎子

h46×w97×d5cm

 

 

 

 

 

掛花入「垂撥」

縦103cm

 

※〝撥〟の字はだんだんと開いていく形を表します。

上方から下方へ少しずつ幅が広がっています。

 

 

 

根来粥椀

9×径13.7cm

 

 


略歴

1952年長野県南木曽の木地師の家に生れる

1972年二代村瀬治兵衛に師事、東京デザイナー学院工芸工業科で学ぶ

1975年岩手県浄法寺町で漆掻きを習得する/1976年より実家の木地挽きに従事する

1982年静岡県函南に工房「網轤」を開設。以後、全国各地で個展多数

 


[論評]冊子「人は日々」No.04より)

 彼が使う素材は、原木の状態で仕入れたものに限らず、一度は人為の世界で使われてきて使用済みと見なされるに至ったもの、つまり古材とされるものも含まれます。工房には、旅先で出会って集めてきた古材がたくさんストックされていて、制作途中で中断されたものもあるそうです。
大蔵さんの創作姿勢は、徹底的にモノに即していると思われます。常にモノを見、モノに肌で接して、そこから何を作るかを考えているようです。それはそれで一つの〝知〟の働かせ方にほかなりません。しかも大蔵さんだけが持っている、独特の〝知〟の体系が働いているわけです。
何を作っていくかというヴィジョンが、外部の知識・情報からではなく、すべて大蔵さんの内部から生まれてきています。