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柳井嗣雄[和紙造形]

[人は日々]

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和紙を素材にした造形作家です。埼玉県飯能市に工房があり、和紙の製造も原料となる楮を栽培するところからおこなっています。
現代彫刻やインスタレーションのような作品を創作する傍ら、和紙による造形技法も様々に研究を積み重ねてきています。
この秋には都下 国立市の美術館で個展を開き、20世紀に活躍した国内外の偉人たち20人の顔の肖像を和紙漉きの技法で表現し、その超絶技巧に来館者は息をのんでいました。

A・ジャコメッティ

(左)平面版  128×89cm

(右)立体版 90×50×50cm

素材は和紙

 

A・アインシュタイン

(左)平面版  128×89cm

(右)立体版 90×50×50cm

素材は和紙

 

(左)平面版の展示会場

(右)立体版の展示会場


[略歴]

1953年山口県生まれ

1977年創形美術学校版画科卒業

1978-80年パリの版画家S・W・ヘイターに師事、1980年より銅版画家としてスタートする

1985年より紙の作品の制作を始める

1986,89年「現代美術今立紙展」優秀賞、大賞

1990年「日本国際美術展」佳作賞/現在は飯能市でPAS和紙アートスタジオ主宰。


[論評]冊子「人は日々」No.04より)

 その20人のリストは、あなたの人格形成、生き方、ものの考え方などにおいてなにがしかの影響を与えてきた人たちであるとするならば、彼らに関する情報の総体から構成される“あなた”という一個の人格は、世界の中(あるいは日本人の中)で唯一独自の存在であるということができます。歴史上の著名人に加えて、あなたの身近にいた人で今は亡くなってしまった人も含めて同じ趣旨の20人のリストを作るならば、“あなた”のユニーク性はもっと際立ったものに感じられるでしょう。
 たとえば、黒のモノトーンで描かれているものは、黒い部分の繊維が予め染料で染められていて、それを生地となる和紙の中に漉き込んでいくのです。つまり紙を漉きながら絵を描いていく――紙を漉くという制作工程と、絵を描くという表現的な行為とを融合させて一つの技法としているわけです。
 いうならば、和紙の風合いや質感や偶然的効果が、そこに浮かび上がっている人物の体臭や体温や呼吸や声色などとして感じられてくるのです。作品が和紙を支持体とする一個の物体という以上に、「風化して消えてゆく物質的存在と、記憶やイメージとして現れる精神的存在」が融けあった、いわゆる“実存者”として在るというところが感動的です。