WEB版『かたち』 since1979

これまでの開催 (PartⅠ-3 2018年)

 

2018年4月23日(月)~28日(土)
ギャルリ・プス 東京都中央区銀座5‐14‐16銀座アビタシオン201
[出品者]
多摩美術大学美術学科学生(講義「現代工芸論」受講者)有志
黒沼大泰(絵画科油画専攻卒業)
・寺松尚美(工芸科ガラス工芸4年)仲田有希(絵画科油画4年)

 

リーフレット表紙

 

 

【出品作品】

黒沼大泰[グラフィック]

Premodernism

116.7cm×116.7cm アクリル、箔

 

『現代工芸論』では日本の美術的表現の特徴を ‶取り合わせの美″ としているのを読んで、日本の一般人の等身大の生活の文脈に接続されているような作品を作りたいと考えるに至った。

理念としては江戸時代前期の尾形光琳からもう一度始めようと死いうことで、金箔による平面表現をベースにした表現を手掛けた。金箔の技法は西洋古典絵画の技法も取り入れている。

しかし具象部分はアクリル絵の具を使って、奥行き感を対比させている。

こうして平面性と立体性を組み合わせた新味のある絵画空間を創り出しているが、更には、外光を反射する金箔の特性を生かして、絵が置かれている環境との相互作用で「その場で顕現してくる絵画」という考え方も打ち出している。

 

 

箔景色-白梅Ⅲ

11cm×11 cm アクリル、箔

 

一枚の金箔に描いています。

 

 

椿

16cm×11cm アクリル、箔

 

同じ技法で椿を描いています。

小品です。

 

参考サイト1
ART MARKETもご覧ください。

 

 

 

 

寺松尚美[ガラス造形]

 

柱となる
21×25×15cm
ガラス  キャスティングとパートドヴェールの併用

 

日々の経験の中でその時その時に生じた感慨を言葉にし、ヴィジュアルで表現する、というスタンスが感じられます。

キャスティングはガラスの塊りで立体感を出す技法ですが、彫刻的なヴォリューム感を感じさせるのは、日本人としては意外と珍しいのです。

『現代工芸論』では、工芸的なものと美術的(彫刻的)なものとの間をどう折り合っていくかを学んだようです。

ヴォリューム感の表出は彫刻的(美術的)であり、ガラスの素材感の掴み方には工芸的なセンスを感じせる、両義性を有したモノづくりと言えそうです。

 

 

 

柱となる

15×25×21 cm ガラス

キャスティングとパートドヴェールの併用

 

 

この作品には次のような言葉が添えられています。

「私たちは変化していくが、存在していた一瞬一瞬は記憶の中で生き続ける。

花のように咲くその記憶をいつまでも忘れないことで、私たちは安心してその手を握ることができる。」

 

 

 

距離と関係
17×15×21cm

キャスティングとパートドヴェールの併用

 

 

この作品と次の作品は対をなしています。、

親密感や安心感が生じてくることは距離が近くなっていくことですが、

距離が近すぎると、よどんだ生ぬるい関係も生まれてくるようです。

 

距離と関係
17×15×21cm

キャスティングとパートドヴェールの併用

 

これは何かよどんだ関係を表しています。

頭の上の傘のようなものは、二人の間に漂う重苦しい圧力のようなものを表しているとか。

 

 

 

仲田有希[油画]

帰路(『on the way back』)

173×66cm   油絵の具・アクリル絵の具

 

額縁に入った四角い空間をはみ出て、居住空間の中に存在するような絵画。

あるいは、内と外の境を紛らかすような絵画の在り方(この作品のスケールは、、住居の玄関のドアのスケールからとっているとのこと)。

そういった想念は特に新しいというわけではありませんが、仲田さんの志向するところのひとつの特徴として、

時空の拡がりを企てつつ他方でそれを封じ込めようとする、アンビヴァラントな、あるいは両義的な性向の認められるのが面白いところです。

 

「物質の限界を超えなければ先に進めない」という『現代工芸論』中の造形論的命題からも、インスピレーションを受けたようです。

 

 

停滞するビオトープ

257×364/257×182(2)cm

油絵の具・アクリル絵の具・パネル

 

生態観察用の池の表を眺めているような絵です。

暗い色調は、制作時の作者の心境を反映しているとか。しかし、黄色い点状のものがポツポツと灯っていて、明るい兆しも見えます。

ちょっとモネの『睡蓮』を思わせるのは、この絵が時空の拡がりを感じさせることに由来していると思います。

が、画面の輪郭は三面鏡の形なっていて、。しかも元々は開閉式になっていたそうです。

閉じ込める機能を有する装置の中に、時空の拡がりが描き込めれているというわけです。

 

 

足もとの微笑

41×24.2cm   油絵の具

 

どうやら花瓶に生けられた花を描いているらしい。

下部が切れているのはどうしてだろうと、疑問を感じた人もいました。

部屋の窓から外を眺めようとして、ふと足元を見ると花瓶に生けた花があった、というところを描いているとのことです。

上から見下ろしているわけです。

いずれにしても、下の方が切れてるように描いているあたりに、やはりキャンバスの四角い空間を抜け出ようとする欲求のようなものえお感じます。

 

 

Drawing attache case

お38×9×29.5cm

オイルパステル・ニスを塗装した木製のアタッシュケース

 

アタッシュケースの中に絵が描かれています。

絵を描いているときは開放感が味わえるが、絵自体は箱の中に閉じ込められている、ということを表したのだとか。

絵を持ち運ぶとか、持ち手をつかんでいると中の絵を感じるとか、いろんなことを思わせる作品です。

因みに、このケース自体も仲田さんが制作しました。

木目自体が絵のように見えてくる、美しいアタッシュケースです。