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花塚 愛[陶芸]

[人は日々]

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若手陶芸家です。
造形表現的な制作ですが、創ることと暮らしていくこととの一致を目指しているように見えます。

 

ふゆまつり

2018年

35×34×36cm

 

〝根源へPartⅡ”展出品作

 

 

木と陽

2018年

62×17×17cm

 

〝根源へPartⅡ”展出品作

 

 

水めぐり

2017年

29×40×40cm

第54回神奈川県美術展大賞受賞

 


 

[プロフィール]

1982年  神奈川県横浜市生まれ

2005年  多摩美術大学美術学部工芸学科卒業

2007年  京都市立芸術大学大学院美術研究科工芸専攻修了

2009年  個展(INAXライブミュージアム・愛知県)、「現代工芸への視点 装飾の力」(東京国立近代美術館工芸館)

2012年  「ふしぎ!たのしい!ゲンダイトーゲイ」(茨城県陶芸美術館)/2017年第53回「神奈川県美術展」工芸部門大賞受賞

 


 

[論評]冊子「人は日々」No.02より)

花塚さんの創作を今流行の超絶技巧とみなす人がいるかもしれないが、よく見ると超絶技巧と呼びうるほどに技巧的に作っているわけでもなく、技巧を見せようとしているわけでもない。ただ細かいディテールを緻密に積み重ねていく作業を延々と続けているだけといえば、まあそういう仕事であるわけだ。

(中略)

この原稿を書く前に私は花塚さんの工房を訪ねて取材させてもらった。学生時代から現在に至るまでの制作物の画像をつぶさに見せてもらったが、この十数年の間に、形態上の実にさまざまな試行錯誤を重ねてきていることがわかった。手がよく動いていてしっかりと作りこんでいることがわかった。そして二〇一一年という年に作風がガラッと変わり始めていることに気が付いた。それまでは、形のさまざまなヴァリエーションを模索していくような作りぶりであったのが、この年からいわゆる「器的形態」というか、空間を内部に抱き込むような形が主流を成してくる。そしてその次には「器的形態」に複数の小さな穴が開けられ、中を覗き込むことを誘うような作調になってくる。そのことを指摘すると、「地面の方に目が向いていくようになったんですかね」と花塚さんは答えた。

「水めぐり」が神奈川県展で大賞を受賞したのを契機として、私は花塚さんに、自身が企画する「根源へ」という展覧会への参加を呼びかけた。その展覧会のリーフレットには出品者のステートメントを掲載しているが、花塚さんは次のように書いています。

「草花も動物もみんなこの土の上にふつうにしているということが、私には大事なことでした。時間は円を描きながら、全体がゆっくりと流れてゆくのを見つめて、毎日をふつうに生きてふつうにつくりたいと思います。」

「毎日をふつうに生きてふつうにつくりたい」というセンテンスは、私に『この世界の片隅に』のアニメ映画版で、主人公が「日々の暮らしを営んでいくこと、それが私たちの闘いだ」と呟くようなナレーションが入るシーンを思い起こさせる。そのように「ふつうに生きてふつうにつく」っていく時間の流れは「円を描きながら、ゆっくりと流れてゆく」形をしていることを、花塚さんは断固としてアピールしているのだということを、私は了解するに至ったのである。