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石田明里[コンテンポラリージュエリー]

[人は日々]

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コンテンポラリージュエリーは、ジュエリー作品はもちろんのこと、オブジェ作品やミニチュア彫刻などの制作も包含し、
素材は何でもありの、創意性に富んだジャンルです。
石田さんの主な素材はガラス。

 

 

[左]

「Meteorology 気象学」 ブローチ

鋳造ガラス、酸化銀

62×62×10mm

2018年

撮影/studio treble

[右]

「Meteorology 気象学」 ブローチ

鋳造ガラス、酸化銀

58×58×10mm

2018年

撮影/studio treble

 

「Silent Echo」 ブローチ兼ペンダント

鋳造ガラス、酸化銀

37×75×12mm

2018年(Cominelli Foundation Awards・ブレシア )

撮影/studio treble

 

「Pappagallo 鸚鵡」ネックレス

フェルト、アクリル、酸化銀/

210×155×25mm

2015年 (酉福ギャラリー・東京, Collect ロンドン)

撮影/studio treble

 


 

[プロフィール]

1974年  東京生まれ

1998年  多摩美術大学立体デザイン科卒業

宝飾企業のデザイナーを経てイタリア・フィレンツェへ留学、ALCHIMIA Contemporary Jewellery Schoolにて現代装身具の理論と実践を学ぶ

2004年  東京で制作開始/以後、国内外での展示多数

[パブリックコレクション]

Cominelli foundation permanent collection (AGC Contemporary Jewellery Association Italy)

 


 

[論評]冊子「人は日々」No.02より)

石田さんは現在、自身が取り組んでいる創作について、「窓(開口部)」という事象をコンセプトとして設定している、と解説している。彼女は美術大学では立体デザイン科のガラスのコースを専攻したが、卒業後は日本やヨーロッパ、アメリカを舞台としていわゆる武者修行を積み重ねてきた。そして一昨年あたりからガラスの世界に立ち戻ってきたのである。この間、窓(開口部)のイメージは石田さんの創作の基本的なテーマとしてずうっと底流してきているようである。

ジュエリーとは、既述したように、身体と外部環境の境界あたりでの存在をアピールするオブジェ群であるならば、身体と外部環境との相互交渉ということが思考や感受性の基盤として常時あるわけである。その相互交渉を身体に穿たれた「窓(開口部)」を通しての出入りの関係としてイメージすることは、ある意味自然なことだ。つまり、「窓(開口部)」という事象をコンセプトとして設定するということは、まさにジュエリー的な発想であり、ヴィジョンであるということだ。

ただ、「窓(開口部)」をどういうイメージで捉えていくかということでは個人差があるし、そしてまさにその点に石田さんの現在の創作を方向付けている鍵がある。石田さんは、「開口部とはいえ、そこを通して外部と内部が出たり入ったりするというイメージで捉えるのではない、ガラスの透光性を利用して向こうが透けて見える必要はない」というふうに考える。ここが興味を引くところである。

むしろ開口部の一方の面を光を反射する物質で遮断する、それによりガラスの中に光が溜まっているように見えてくる。青い色のガラスなら青い色がガラスの厚みの中に暗く溜まって見える、その効果を生かして装身のモチーフとすることに思い至ったのである。ガラスを素材に創作する多くの人がガラスの透光性に魅力を感じてそれを生かした表現に向かうが、石田さんはある意味そういったガラスの特性を否定する捉え方をしているわけである。しかしそれは物質の特性の逆説的な生かし方であるとも言える。