創刊第2号[2024年6月1日発行]
目次
【TOPIC Ⅰ】『溶ける機能――飯島直樹のデザイン手法』発刊
【TOPIC Ⅱ】 「出版記念の会」の報告
【TOPIC Ⅲ】吾妻勝彦さんの新作
【TOPIC Ⅳ】よもやま話
かたちブックスのデザイナー——鈴木光太郎
[悦ばしきコトノハ] 「溶ける機能」の背景
【TOPIC Ⅰ】
『溶ける機能――飯島直樹のデザイン手法』発刊
5月20日
『溶ける機能――飯島直樹のデザイン手法』が出版されました。
インテリアデザイナー7飯島直樹の2010年から2023年までの約10年間の設計・施工の記録集であり、デザイン手法の開陳の記録です。
2024年5月20日初版発行
A4版 4色刷 392頁
文/笹山 央、飯島直樹
価格/6,600円 (税込)
[主な施工例]
STONES(松下産業㈱ショールーム)、工学院大学校舎、PMOビルディング、ほか
[インタビュー]
Part1/この10年
part2/インテリアデザインとは何か
Part3/インテリアデザインはこれからどうなっていくのか
論評
『溶ける機能――飯島直樹のデザイン手法』——笹山 央
飯島直樹さんのサイン
【TOPIC Ⅱ】 「出版記念の会」の報告
5月17日
『溶ける機能――飯島直樹のデザイン手法』出版記念の会を開催しました。
主催:かたちブックス
日時:2024年5月17日午後6:00—9:00
会場:東京デザインセンターガレリアホール
発起人:小坂 竜・高橋正明・難波和彦・林登志也・二俣公一・
船曳鴻紅・百田貴宏・山倉礼二
司会:さとう未知子
200人以上の方々のご参会をいただきました。
会場は混沌とした様相を呈していきましたが、飯島事務所の元スタッフの方々による整然としたアテンドでプログラムは滞りなく進行していき、皆さん意義のある時間を過ごされたと思います。とても実のある祝賀の会となりました。
詳細は下記Facebookでご覧ください。
さとう未知子さんのFacebook 司会を務められたさとうさんが丁寧な
報告と感想を書いて下さっています。
水谷晶人さんのFacebook 出版記念の会の録画中継です。
【TOPIC Ⅲ】
吾妻勝彦さんの新作
千葉県我孫子市では、手賀沼親水公園をメイン会場として、「第23回我孫子アートな散歩市」が開催されています。
吾妻勝彦さんの地元であり、毎年このイベントに参加して手賀沼公園内の広場に作品を展示しています。
展示場所に下記の文章を添えています。
「ある日のニュースで、ウクライナの若い兵士が、”いま、羽根が欲しい” と言った。
羽根があれば僕はどこへでもいけるし、僕は自由だ。
少し前、日本でクマが牛を襲う事件が相次いだ。牛を襲ったクマは、人間の敵になりましたが、私は作品制作の中で、お互いを日々を暮らす、命として作っていきたいと思っています。」
吾妻さんからのメール
「今回の作品(特に広場の大物) ではこれまでと少し違いナラティブ、 物語性の強いメッセージを感じ、ほっこりした。
というメールをもらいました。 ナラティブという言葉に初めて出会い、 多方面から得た私なりの思いでチャレンジした作品を、 もっと深めていこうと考えました。」
【TOPIC Ⅳ】よもやま話
かたちブックスのデザイナー
鈴木光太郎
かたちブックスのデザイナー、鈴木光太郎を紹介します。
鈴木と飯島直樹さんは旧知の仲です。1980年代に乃木坂に事務所を構えていたとき、事務所のインテリア施工を飯島さんにお願いして以来のお付き合いです。
昨年かたちブックスを立ち上げたときに、飯島さんの本を作りたいと考えて久しぶりに飯島さんを訪ね、作品集の制作を持ちかけましたが、当初飯島さんはあまり乗り気ではありませんでした。それで鈴木は飯島さんのホームページに載っている画像を使って作品集のサンプルを作り、飯島さんにプレゼンしたところ、本の見栄えのよさに「驚いて」、前向きに出版に取り組んでいただけるようになりました。この経緯からすれば、『溶ける機能――飯島直樹のデザイン手法』が世の中に存在するようになったのは、鈴木の手柄であると言えるわけです。
私(笹山)が鈴木に出会うのは1990年代の半ばであったかと思います。数年後の1997年に京都市の同朋社出版という会社が出版することを決めた『陶21』という本の編集を私は担当し、ブックデザインを鈴木に依頼しました。本ができて、鈴木の知人が京都の松岡正剛さんに見せたとき、松岡さんは「今まで出版された陶芸関係の本の中で一番出来がいい」と賞賛してくれたとのこと。その話を私が知ったのはつい最近のことです。
鈴木は、仕事の合い間に焼き物を作ってます。焼成は薪の窯で行っていて本格的です。形も悪くないですが、焼きの具合いがいかにも焼き物らしくていいんです。
焼き物はやはりよく焼けてないとダメです。よく焼けてないときれいな土の色になりません。鈴木の焼き物はその意味で、きれいな色をしているのが特徴と言えるでしょう。
鈴木光太郎作「灰釉花生」
鈴木のやきものを数十年見てきた私の眼には新境地が開けているように見えます。何か予兆的なものを感じます。
【悦ばしきコトノハ】「溶ける機能」の背景
20世紀の現代思想をリードした哲学者ジル・ドゥルーズに「器官なき身体」という概念があります。生命活動を継続していくために組織された諸器官の整序的体制としての身体が諸器官を失うとフニャフニャに溶けていくイメージを喚起します。絵画でいえばフランシス・ベーコン描く不定形の身体が連想されます。
ドゥルーズ哲学の紹介者宇野邦一さんは、「器官なき身体」を次のように解説しています。
「…ひとつの身体は、固定した形態や器官や機能によって決定されるのではなく、形態も器官も機能も、無数の微粒子の運動と静止、速さと遅さによって、刻一刻規定されているだけである。こうした微粒子のひろがりは、基本的に輪郭をもたず、他の微粒子のひろがりと交錯している。また触発し、触発される力とともにある。」
(宇野邦一著『ドゥルーズ 流動の哲学』より)