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溶ける機能――飯島直樹のデザイン手法

 

かたちブックス

2024年5月20日初版発行

A4版 4色刷 392頁 頁

文/笹山 央、飯島直樹

価格/6,600円 (税込)

 

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構成

CHAPTER1 STONES(松下産業㈱ショールーム)

CHAPTER2 Kogakuin University(工学院大学校舎)

CHAPTER3 PMO(野村不動産株)

CHAPTER4 Residence(個人住宅)

CHAPTERArchiveve(1980年代~2000年代の仕事)

CHAPTER4 Product Design(家具、オブジェ他)

 

インタビュー

1.この10年

2.インテリアデザインとは何か。

3.インテリアデザインはこれからどうなっていくのか。

論評

溶ける機能――飯島直樹のデザイン手法   笹山 央

 

プロフィール

1949年埼玉県生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン専攻卒業。インテリアデザイン会社スーパーポテトに入社。バー・ラジオ、OLD NEW、無印良品青山などを手がけたあと、1985年に飯島直樹デザイン室を開設。世界の中で独自の展開を遂げる、1960年代以降の日本のインテリアデザインの最前線に立った。THE WALL、伊丹十三邸、内儀屋、5Sニューヨーク、blupondソウル、ほぼ日刊イトイ新聞事務所、PMOオフィスビル、工学院大学ラーニングコモンズ、ショウルームSTONESなど、国内外の空間デザインに携る。

 

飯島直樹デザイン室ホームページ


 

「溶ける機能  Melting Function」について
論評「溶ける機能――飯島直樹のデザイン手法」より

飯島が書いたエッセー「システム」の中に、以下の文章が見える。

「空間デザインにおけるシステムの概念は、一般的に便利な有用性として理解される。システムを導入することで、機能が可変的になり、互換的になる。(中略)システムの概念は、デザインの機械的な方法としてとらえると、このような利便性だけではなく、空間デザインの可能性をおし拡げる要素を持っている。」

この指摘は私にはとても新鮮に感じられた。私の仕事のフィールドである工芸の世界では、その造形的規範として機能(有用性)と形(装飾)の関係ということが言われ、概ね建築やデザインにおける近代主義的なスローガン「機能が形を決定する」を規準として、それに対するジンとアンチの間のどこかに位置取りをすることで、さまざまな工芸思想の流れが生じてきたのである。ポストモダンではこの命題が相対化されて、工芸の世界にも「自由な造形(工芸メディアを活用した造形表現)」ということが容認されるようになった。しかし「機能が形を決定する」というディスクールは、ものづくりの世界を機能と形の二つのカテゴリーだけで構成するスタティックなイメージを生み出すことにもなった。そこには機能と形が対立していくギスギスした世界観を作り出していく空気感を伴っていたのである。

これに対して上述の引用文中の「機能が可変的になり、互換的になる」という捉え方は、「機能と形」をめぐる認識のパラダイムの変容を示している。機能は一義的なわけではなく、それが求められる用途的連関や使用者・受用者の行動パターンとの兼ね合いの中で可変的であり、互換的である。それは使用される空間(インテリア)の状況を表している。機能の前にシステムがあり、そのシステムの中に機能が溶けこんでいく。あるいは、システムの中に形と機能が溶け込んでいる、とも言えるか。

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