[人は日々]
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三重県伊賀市の伊賀焼の窯元に嫁いで、やきものの制作が始まりました。
伊賀焼と言えば無釉焼締の茶道具が定番ですが、それとは一切関係なく、
成形は自分の気の向くままに、そして工房にあった釉薬をたっぷりと使った作品を作ってきました。
いわば、「自分が歩いた跡に道ができる」タイプの創作家です。
一見無手勝流で奔放な制作ぶりですが、よく見ると、徐々に作行きの深みを増してきています。
自分で自分を育てていくタイプの創作家とも言えるでしょう。
2015年に開催した個展の会場
壁にかかっているのは若い時分に制作したアート作品
伊勢現代美術館(三重県伊勢市)にて
Bronze-2016
46×30×31㎝
2016年
White-2017
33×35×30cm
2017年
White-2017
33×35×30cm
2017年
Bronze-2018
27×33×65cm
2018年
[プロフィール]
1952年広島県生れ
1973年京都精華短期大学染織科卒業
1975年染色家杉谷富代氏に師事
1976年日本現代工芸展入選
1976‐77年ウィリアム・ヘイター氏の「アトリエ17」(パリ)で銅版画の技術を学ぶ
1978年陶芸を始める
1990年より中京・関西を中心に個展・グループ展開催多数
2015年伊勢現代美術館にて個展(伊勢市)
伊賀焼茶陶窯の工房環境にありながら、谷本由子さんは既成の作陶技法に依ることなく、いわば“無手勝流”の制作の日日を送ってきたように見える。作品の出来の良し悪しの判断について、客観的な、つまり既成の価値判断には頼らなかったが、しかし自分自身の中にも確立したものがあるわけではないと、谷本さんは言う。言ってみれば、そのときそのときの自分の中での感覚的に判断しながら制作・修正を進めていくということであり、そういった在り方が、奔放とか出たとこ勝負とかそういった見かけを作り出してきた。けれども、本当はそういう見かけの内側で何かが育ってきている、谷本由子という人間の実質が育ってきていて、それが彼女の創作を導くミューズの役割を担いはじめているのである。
二〇一五年の個展以降に制作された近作が置かれている谷本さんのアトリエで、取材させてもらいながら私は上に書いたようなことを感じていた。
粘土から生まれてくる形をなるべくそのまま生かしていくと言うのを聞きながら、しかし、どこかに“形を求めていく意志”のようなものを私は感じていた。形の良し悪しの判断というのを、客観的にここがこうだというふうには言えないけれども、でも何か“形が表現されている”ということを感じる。その感じというのが、谷本さんの中で育ってきているものに他ならず、谷本さんという人間の実質として感じられるものである、というふうに私には思える。