WEB版『かたち』 since1979

KATACHI BOOKSメールマガジン18

第18号[2025年12月19日発行]
目次

【TOPIC Ⅰ】来春の新刊のお知らせ

『長沢岳夫作品集What is copywriting』の刊行

【TOPIC Ⅱ】出張譚

石垣島に数日逗留しました。

【TOPIC Ⅲ】よもやま話

「かたち」について(続)  雑誌名「かたち」に込めた意味

【悦ばしきコトノハ】 

長沢岳夫の言葉
「人が人を想うから、縁が生まれる。年老いて、やっと分かりました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【TOPIC  Ⅰ】来春の新刊のお知らせ
『長沢岳夫作品集 What is copywriting?』が3月4日 
(株)リトルモアより刊行
――昭和・平成の広告デザインの華麗なる展開をリードした
コピーライター長沢岳夫と仲間たちのクロニクル
今年の後半は、1970,80年代を中心として広告デザインのコピーライティングの世界で、第一人者として活躍してきた長沢岳夫さんの作品集『What is copywriting?』の制作にほとんどかかりっきりでした。長沢さんは今は80歳代に入って、生地でもある千葉県の佐倉市で悠々自適の生活に入っておられて、昨年から取材に何度か足を運びました。
1970,80年代というのは、広告デザイン業界のスーパースター的な存在と目されていたクリエーターやデザイナーや写真家が綺羅星の如く集まって活動していた時代ですが、長沢さんはそれらの人たちと丁々発止の仕事をしてきており、この人たちとのかかわりを通して広告デザインの黄金期の様相を伝えようということも出版趣旨として込めています。企画はかたちブックスのデザイン担当鈴木光太郎の長沢氏に寄せる個人的な思いから発したものです。しかし現在に至って、黄金期のクリエーターの方たちからも制作への協力をいただいて、一大イベント的な出版事業にまでふくらんできています。クリエーター一人一人の個別的な作品集は散見されますが、一人のコピーライターの軌跡がある一つの時代の総括的な記録としての意義を兼ねるような本はこれまでになかったように思います。それはまさに長沢さんの偉大さを証明するものとも言えるでしょう。
登場する主なクリエーターたちは以下の通りです。
 [アートディレクター・デザイナー]
   石岡瑛子、長谷川好男、浅葉克巳、サイトウマコト、戸田正寿、
   葛西薫、中島祥文、高杉治朗
 [フォトグラファー]
   菅昌也、藤原新也、横須賀功光、繰上和美、他

 

[制作]
  アートディレクション/葛西  薫
  表紙デザイン/井上嗣也
  プロデュース/鈴木光太郎(かたちブックス)
  (笹山も巻末長沢岳夫論で参加しています。)

 

今年のNHK大河ドラマは文芸・美術を中心とした文化文政期の商業美術・文芸の盛り上がりを描いてましたが、昭和後期から平成前期にかけての日本の商業デザインも数多の天才アーチストの輩出により、化政期に匹敵する文化的現象として、後世の評価を受けるのではないか、そしてその時に『What is copywriting?』が貴重な文献史料としての意義を認められるのではないかと、心密かに期待しております。
『長沢岳夫作品集 What is copywriting?』は明年3月4日に㈱リトルモアより発行、発売されます。
かたちブックスは編集・制作担当です。
(H.S.)

制作中のサンプル本表紙

 

1975年のパルコの新聞広告より

[制作スタッフ]AD石岡瑛子/Ph横須賀功光/CW長沢岳夫

 

長沢岳夫ポートレート

[主な受賞歴]
1972 年 東京コピーライターズクラブ(TCC)最高新人賞
1974・76・80・84 年 TCC クラブ賞
1983 年 東京アートディレクターズクラブ(ADC)最高会員賞制作者賞 他

 

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【TOPIC Ⅱ】出張譚
石垣島に数日逗留しました。
11月上旬に縁あって沖縄県の石垣島に行ってきました。高齢に達し、この先、石垣島に行くことはないだろうと思い込んでいたものですから、思わぬ余得に心弾ませながら行ってきました。
呼んでくださったのはやきものの創作からアートの創作へと展開していこうとされている陶芸家金子晴彦さんとパートナーの聖代さんご夫婦で、お二人への取材が目的でした。
石垣島の工芸品は織物の八重山上布やミンサー(花)織りが知られていますが、伝統的に伝えられてきているネイティブな陶芸はありません。金子さんの父親が鹿児島県の与論島で窯元を開業して、のちに石垣島に移転して石垣焼窯元としたのを、金子さんが受け継いで現在に至っています。中国由来の油滴天目釉と、ミネラル鉱石から発色される石垣ブルーと名付けられた青いガラスによる抽象的な表現を組み合わせた、独特なやきものを作っています。
油滴天目釉と石垣ブルーの組み合わせは、本土の伝統的陶磁器業界では異端のやきものとされて、評価がえられないそうです。しかし海外では、イギリスの大英博物館や、世界の古美術を収蔵・展示するフランスの国立ギメ東洋美術館に収蔵されたり、その他ヨーロッパやアジアの国々で迎え入れられるなど、評価は高いのです。日本の伝統的な陶磁器業界の、陶器カテゴリーの旧い定義をはみ出したものは認めようとしない頑迷さは、国際政治の旧弊の観念から抜け出ようとしないで孤立化を深めていくどこかの国の政権とそっくりです。海外の人々はそのような固定観念に拘束されていないので、人為の美あるいは感動を素直に受け入れるんですね。
金子夫妻が創ってきたやきものは、アートとしての自己解放の方向を目指し始めていて、これからの創作の戦略を練っていこうとされています。陶芸の伝統もないし、アートの遺産もまだこれといったものが見当たらないようですが、海や空や豊かな植栽に囲まれた石垣島自体が、一つの大きなアート空間のように私には感じられました。
金子聖代さんのアートプロジェクトに「茶室〈島〉」と題された野外のインスタレーション作品があります。「島全体が茶室である」というのがコンセプトです。この方向ですね。この先に石垣島アートの未来が展望されるような気がしています。
 (H.S.)

 

 

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金子晴彦作「油滴天目茶碗」 国立ギメ東洋美術館(フランス)蔵

フランスの美術雑誌”Beaux Art”の、国立ギメ東洋美術館収蔵作品の特集記事に掲載された写真からの転写。

 

逗留中に宿泊していたホテルの窓から望む風景。

水平線上に少し太めの線のように見えるのが竹富島。

シンプルな構図ながら、刻々と変化していく海と空の表情は、いつまでも眺めて見飽きることがなかった。

 

南の島に来たのは数十年ぶり。ハイビスカスの花が至る所で咲いていて、燃え上がるような緑の中で赤の色が目に沁みた。

金子さんの工房の入口に置かれていた花手水。昼食を摂ったレストランの入口でも見かけた。

【TOPIC Ⅲ】よもやま話

「かたち」について(続)

雑誌名「かたち」に込めた意味
名詞“かたち”を表す漢字には、形、型、象、容、貌などがあります。雑誌を創刊するに当たって雑誌名かたちにどの漢字を当てるかを検討し、ひらがな表記にしたのは、漢字で表される意味合いをすべて含むことを意図したからです。
それから、私たちが日常に経験していることの中に“形”のないものはありません(もしあるとしたら、それは人間の感官では認知できません)。観念や時間の流れのような抽象的な事柄や、感情の動きのように形をまとってないような事象は、記号や文章によって表すことで“形”あるものとすることができます。つまり人間がその存在を認知できるどんなものごとも、それぞれの“形”があるということです。そして形をまとっているからには、その形を通して物事となんらかの関係を作ることができるわけです。加工するということもできます。
加工する場合はそれを遂行していく“技法”が要請される。ということで、人間と事物との関係は、“形”を媒介しなんらかの技法を伴って作り上げていくものとして捉えることができます。このような関係を「工芸」と定義し、「かたち」は“形”を有するものすべてを意味する、というふうに定義したのです。したがって、季刊現代工芸誌『かたち』はすべての“形”ある世界をフィールドとするオブジェマガジンであることを謳ったのです。具体的には、創刊5号までは陶芸、漆芸、金属工芸、染織、木工を特集し、第6号から9号までは「都市と工芸」、音楽、映像、言葉、を特集したのですが、そんな調子で工芸およびかたちの概念をとことん拡げていこうとしたわけです。
さらに、“かたち”は日本文化の基底をなす概念とみなし、それはどのような形で歴史上に顕現してきたかを素描するという趣旨で、第10号に「茶の湯」、第11・12合併号で「民藝(民衆的工芸)と前衛、そして装飾芸術へ」を特集しました。装飾芸術は、その源郷として渦巻文様から水玉文様への移行過程として造詣表現の歴史を総括し、工芸と美術を溶解させていったわけです。
以上が「かたち」という言葉に込めた意図のです。これ以外にもありますが、一応中枢的な部分であり、このあたりにしておくことにします。
(『かたち』の読者のほとんどは工芸の制作者でしたが、休刊になるまでよくついてきてくれたものだと感謝しています。のみならず、数年後には復刊を勧めてくれ、そのための援助もしてくれた人たちがいて、そのお陰で現在の私がいます。本当に有難いことだと思っています。)
(H.S.)

 

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【悦ばしきコトノハ】

「人が人を想うから、縁が生まれる。年老いて、やっと分かりました。」

     長沢岳夫[コピーライター]
      (『長沢岳夫作品集 What is copywriting』より)

 

『長沢岳夫作品集What is copywriting』(上記TOPIXⅠ参照)のために、長沢さんが創作したコピーライティングです。つまり最新作ということになります。本の最初のトビラに入る予定です。
このコピーに決まる前に候補案が3つありました。かたちブックスは別の案のものを支持し、長沢さん本人はこの案がお気に入りとのことでした。出版を引き受けていただくことになったリトルモアの社長と担当者もこの案を支持しました。それでこの案に決まりました。
少し日にちを置いて今改めて比べますと、私もやはりこのコピーの方に、味わいが深さが感じられてきました。当初は「人が人を想うから、縁がある」がありふれた言葉のように感じられましたが、そのさりげなさがかえって、このコピーの奥行きとして感じられてきました。考えてみると、ありふれた言葉の表現が、ヴィジュアルと絡まって印象を深める効果を生み出す手法は、長沢さんの得意技であったわけで、それがこのコピーライティングにもよく出ていると言えます。後半の「年老いてわかってきた」というのも、ある意味ありふれた言表ですが、ある人は、この照れ方がカワイイと評しました。今の私には、長沢さんの万感の思いが込められているように感じられてきました。
(H.S.)

 

 


編集後記
かたちブックスめるまが便  第18号
発行メディア:工芸評論「かたち」 https://katachi21.com/
発行サイト:かたちブックス
Copyright(c)Hiroshi Sasayama 2024
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